ポストコロナを迎えた2023年。新型コロナウイルスによる行動制限や消費者の買い控えなど経済面への影響も落ち着きを見せ、インバウンド需要も順調に戻ってくるなど日本経済の底打ち感は止まったとみられる中で、化粧品市場においても緩やかな回復基調で推移している。しかしながら、コロナ前の2019年に比べると依然として厳しい状況が続いており、更に単価ダウンや消費者の化粧に対する意識の変化といった課題も片側であることも注視していく必要がある。(中濱)
■ポストコロナの化粧品市場
まず、23年度の国内化粧品市場規模(メーカー出荷金額ベース)をみると、2兆4500億円で着地すると予測されており、コロナ前の19年に比べると約9割まで戻る見込みだ。(矢野経済研究所調べ)
では、19年対比でみた23年度の具体的な化粧品の動きを、経済産業省の「化粧品出荷統計1~8月累計」から読み解いてみると、【1~8月出荷統計全体】の販売個数(以下:個数)は85%、販売金額(以下:金額)は72%と未だ厳しさをにじませる動きとなっている。
更にカテゴリー別で深掘りすると、【皮膚用化粧品全体】の個数は87%、金額は62%となっており、【主要アイテム別】では、「乳液」個数73%、金額51%、「化粧水」個数78%、金額47%、「美容液」個数85%、金額52%と、アイテム別の金額においては、「乳液・化粧水・美容液」主要3品目すべてが19年比に対し5割しか戻っていないことが見て取れる。
次に【仕上用化粧品全体】は、個数72%、金額71%。【アイテム別】では、「ファンデーション」個数60%、金額55%、「おしろい」個数104・1%、金額110%、「口紅」個数57%、金額52%、「リップクリーム」個数82%、金額74%、「ほほ紅」個数56%、金額49%となり、アイテムの中で、唯一「おしろい」が19年を超える伸びとなったものの、仕上用化粧品においても、コロナ禍が明けメイク商材が戻ってきた中でも個数・金額ともに19年比を大きく割り込む形となっている。
■単価ダウンが顕著に
このように、ポイントとしては①スキンケアの単価ダウンが顕著に表れていること②コロナ禍からのメイク需要回復の遅れ③19年はインバウンド需要が活発であったが、23年は回復基調にあるものの、19年比では70~80%の戻りとなっているなど、大きく3つが要因として挙げられる。
「スキンケアの単価ダウン」においては、22年からはじまった物価高騰が23年も続き、食料品などあらゆるモノの値上がりが大きく影響したことが考えられる以外にも、某専門店経営者は「スキンケアの単価ダウンに加え、コロナ禍でよりシンプルステップのスキンケアを望むお客様が増えた」と話す。
その裏付けかは分からないが、スキンケアの中で唯一「モイスチャークリーム」が個数105%、金額85%と大きく上回る動きで推移していることが分かる通り、クリームの1品使いなど、スキンケアの〝簡素化〟が進んでいるのではないかと危惧される。
「メイク需要の遅れ」については、新型コロナの5類移行が5月に実施され、本格的な動きだしがそれ以降になったこと、また脱マスクが思ったより進まなかったことが、回復の遅れに繋がったという見方がひとつ。
■「おしろい」のみ19年を上回る
もう1点、「おしろい」が特筆した動きをみせているが、その要因として某メーカーの広報担当は「おしろいはマスクから肌を予防するだけでなく、昨今、ファンデーションで悩みをカバーするという考え方から、コントロールカラーなどによって、光やツヤで〝素肌美〟を生み出すメイクがブームとなっている。その最後の仕上げとして注目されているのがおしろい」というように、ナチュラルメイク志向がその背景にあると考える。
以上のように、消費者の化粧品に対するニーズはコロナ禍によって大きく変わっていることが分かる。また市場は24年に向け回復傾向にあることは間違いないが、一方でスキンケアの簡素化など懸念材料があることも否めない。そうした状況を踏まえ、どのような取り組みに注力していくかが重要になるだろう。
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