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日本商業新聞

【2024/7/22 日本商業新聞】小売店として新価値創造を / 心の距離感を縮める / 独自の取り組みで存在感

今週号の「夏季特集号/化粧品部門」では、お店探訪「シェルクルール化粧品」の他、「注目の単専門店インタビュー」の2店舗、特別企画として、今、専門店流通で積極的に展開の場を拡げているポーラ、アテニア2社の新店舗戦略について探った。これら取材を通して感じたのは、社会環境や化粧品市場、そして生活者の価値観など様々なことが大きく変化しながら一気に動き出している今、メーカーも専門店もそれぞれ呼応するように新たな動きを見せていること。その中で専門店にとって今後不可欠なものとは何か。(半沢)



■小売店として新価値創造を


前々回の1面では、化粧品市場でのマルチチャネル化に合わせて、メーカー各社の動きや今後の方向性などについて記したが、今号では「夏季特集号/化粧品部門」での取材を通して感じた専門店の1つの傾向についてフォーカスする。


その傾向とは端的にいうと、専門店としてだけではなく、「モノ(商品)を販売する小売店」として、新たな価値を創造しようとする動きが見られるということである。


例えば、今号の「注目の専門店インタビュー」における取材店の一つ、「はっぴーとーく樹音」(神奈川県川崎市)では、創業当時、店内にいつも笑い声が溢れる「フェイバリットストア(お気に入りのお店)」を理念に掲げていた。その思いは代替わりした今も同様で、化粧品を買う時だけではなく、「元気がない時」「誰かと会話をしたい時」など、ふと立ち寄りたくなる自宅や学校、職場でもない「サードプレイス(第3の場所)」として、お客様の「心の拠り所」を目指し、日々取り組まれている。


取材の中で東流音社長は「コロナにより、外出を控え、リモートワークが当たり前となったことで、多くの人が改めて『人と人とのつながり』の大切さを感じたのではないでしょうか。コロナ収束後も社会環境は依然変化していますが、そうした時代だからこそ、新しい『心の拠り所』を求める方はさらに増えるはずです」と語っていたのが印象的であった。



■心の距離感を縮める - 独自の取り組みで存在感


そして、もう一つの取材店である「田立屋」(長野県松本市)。お店は1948年に創業、今年で176周年を迎える、日本で最も歴史の古い専門店として全国で広くその名は知られている。


業界でいち早く「化粧健康法」に取り組まれていたが、コロナ禍となってからは、安全対策の側面から1つの場所に大勢の人に集まってもらうようなセミナーの実施が難しくなり、一旦活動はストップ。そしてコロナが収束した今、それに代わって取り組んでいるのが地域活性化を目的としたイベント「木曽みやび祭り」である。


この「木曽みやび祭り」とは、木曽を創業のルーツに持つ「田立屋」が中心となり、「松本・木曽のかけはし実行委員会」を新たに立ち上げ、地域社会×化粧品専門店の新たな地域活性化モデルづくりプロジェクトとして昨年にスタートした。松本を訪れた観光客や松本在住の人々に木曽の魅力を広く発信することで、松本と木曽をつなぐ架け橋を目指すイベントとして開催され、昨秋に行われた第1回目では多くの人で賑わいをみせた。


この「はっぴーとーく樹音」「田立屋」による取り組みは、一見すると違うようにも思えるが、その根幹にある想いというのは、化粧品専門店としての価値だけではなく、その地域と長年にわたって共に歩んできた小売店としての新たな価値を創造することではないだろうか。その新たな価値を創造することで「地域住民との『心の距離感』を可能な限り縮めていきたい」、そんな想いを取材の中で終始強く感じることが出来たのである。


専門店として価値に加えて、小売店としての新たな価値の創造に取り組む専門店はこの2店だけでない。その地域の特性やお店に来られるお客様の嗜好、それらを知り尽くしているからこその取り組みに力を注ぐ専門店は確実に増えている。



経済面も含め、今後社会環境がどう変化していくのかは不透明で、化粧品市場においてもどう変化していくかはわからない。当然、そうした環境に合わせてメーカーも専門店も変化していかなければならない。


こういう時だからこそ今後大事なのは、化粧品専門店としての価値を高めていく一方で、地域に根付いた小売店としての価値をどれだけ高めていけるかも大事で、それがお店の魅力につながってくるのではないのか。

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