新型コロナ感染症が5類に移行して、初めての年明けを迎えた2024年。2020年以前のコロナ前の状況に完全に戻ったとは言えず、コスト高やウクライナ問題もあり、先行きは不透明だ。ただ、それでも国内の化粧品業界では「さあ行くぞ」と明るい雰囲気が漂い始めた。一方、生活者の化粧品に求める要素や意識は変化し、その変化のスピードも幅も今後さらに顕著になるのは間違いない。そうした状況の中で、今後生活者が化粧品に求める要素の1つとして挙げるとするならばそれは「魅せる化粧品」である。(半沢)
■「魅せる」化粧品 - 生活者の心をつかむ
日本国内だけでなく、海外からも日本の化粧品が高く評価されていた理由は、優れた機能性だけでなく、高い安心・安全性を兼ね備えているからなのは言うまでもない。ただ、この数年、欧州や北米ブランドだけでなく韓国コスメや中国コスメタイコスメなど、いわゆる「アジアンコスメ」も台頭しており、機能性に加え、日本のコスメではあまり見られないデザインや切り口で若い年齢層を中心に支持を集める。
そうした変化を踏まえて、2024年以降の化粧品に求められていくものがあるとすれば、機能性や安心・安全性はもちろんのこと、それ以外の要素も含めていかに「生活者の気持ちをつかむ」かではないのか。そして、それ以外の要素とは、肌に塗布した時の使用感触や香り、さらには容器やパッケージのデザインも含まれるだろう。
冒頭の「魅せる化粧品」とは、感動や興奮を引き起こす化粧品であり、生活者の気持ちを掴む化粧品で、要は多くの生活者に「使ってみたい」と思わせる化粧品でなければ国内市場だけでなく、グローバルの市場でも支持を獲得していくことは難しいと言える。
先日、行われた化粧品歯磨業界連合新年会で、魚谷雅彦会長は「日本の化粧品の魅力をジャパンビューティとして国内外に発信し、国内はもちろん、世界で存在感のある化粧品産業の実現を目指す」と明言した。
日本の化粧品の魅力とは、機能性や安心・安全性の高さが一番先に頭に浮かぶが、それだけではなく、ブランド固有のストーリー性やメソッドも欠かせない魅力になっている。しかし、日本市場で数多くの国内外の競合メーカーがひしめき合う現状を踏まえると、ひと際強い存在感を発揮していくためには「魅せる化粧品」であることが重要な要素になるはずだ。
そしてこれは化粧品のことだけでなく、化粧品専門店にも当てはまる。これまでは豊富な品揃えやわかりやすい商品陳列(MD)、そして丁寧な接客応対や高い施術技術が専門店の一番の強みであった。しかし、多くの専門店がその強みに磨きをかけるべく取り組んでいることを考えると、これからは、その専門店の強みに加えて、お店独自の活動やお客様への想いをどう生活者に魅せていくかも大切になる。その意味では、SNSを含むデジタルを使って積極的に情報を発信していくことも大切だし、生活者との接点を拡大していくためにも重要なツールとして取り組むべきである。
化粧品メーカーはモノづくりやマーケティング専門店では接客応対や施術、これは今まで磨きあげてきたものはいずれも唯一無二である。その磨きあげてきたものを、どう生活者に魅せていき、そして生活者の心を掴んでいくのか。それが2024年以降の化粧品業界とって大きなテーマとなるのではないだろうか。
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