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日本商業新聞

【2025/1/1 日本商業新聞】メーカーの「精選」より明確に

2024年の「国内化粧品市場」は、23年に続き脱マスクが進んだことや外出機会が増えたこと、また渡航制限の大幅な緩和や円安の進行を受けた訪日客の大幅増加に伴うインバウンド需要の高まりによって、前年比4.2%増の3兆2012億円が見込まれている。(富士経済調べ)


 価格帯別でみると、「高価格帯」は前年比106.9%の1兆1287億円、「中価格帯」は同101.3%の1兆1059億円、「低価格帯」は同104.9%の7446億円と全ての価格帯で伸長。

 要因をみると、「高価格帯」は色味や質感などの使い分けを目的に、ベースメイクやポイントメイクの複数購入がみられるほか、ケア意識の高まりによりヘアケア・へアイメイク商品の使用が定着し需要が増加。更に、訪日客のインバウンド需要も高まり、市場は拡大すると予想されている。


「中価格帯」は、医薬部外品の発売が増えていることや機能性を訴求した商品の需要が増え、マス層を中心に機能と価格のバランスの取れた商品を選択する消費者が増加。


「低価格帯」は、トレンドの韓国メイクを再現できるベースメイクやポイントメイクの需要が増えた他、スキンケアは「美容医療」をコンセプトとした商品が投入され、インバウンド需要の増加も相まって市場は更に拡大すると予想されている。


そうした中で「化粧品専門店」の動向をみると、14面に掲載の通り、「売上」においては、テナント店・路面店ともに好調に推移したお店が大半で、中には「コロナ前を越える最高の売上となった」というお店も出てきている。


また「客数」「客単価」においても概ね好調に推移しているが、「客単価」においては商品の値上げ等により客単価が上がったことが理由として挙げられ、店頭では「消費者の財布は依然として固い」という実感を持っている方が多い。


こうした動きを受け、制度品化粧品メーカーにおいても国内市場は堅調に推移。資生堂では「クレ・ド・ポー ボーテ」「SHISEIDO」、コーセーグループでは「コスメデコルテ」を筆頭に好調な動きを示している。


国内の状況は、物価の高騰など懸念材料はありながらも緩やかな回復傾向が続いているが、その片側で苦戦を強いられているのが「中国」「トラベルリテール」だ。


各社決算発表によると、「資生堂」では、2024年12月期の連結純利益(国際会計基準)が前年比72%減の60億円になる見通しと発表。従来予想(220億円)から160億円の下方修正となる。不振が続く中国事業と、トラベルリテール事業の先行きが不透明として、増益としていた従来予想を一転して引き下げた。売上高は2%増の9900億円となる見通しで、従来予想を100億円下回るなど、日本事業の好調やコスト削減などを行ったが補えず、25年~26年も引き続きコスト改革に取り組む。


「コーセー」は、営業利益を従来予想の200億円から180億円(前期比12.6%増)に引き下げ。売上高は国内とタルトの業績が伸長し従来予想を上回るが、中国・トラベルリテールが回復見込みを下回り、純利益は同126億円から80億円(同31.4%減)に減額。また中国事業の構造改革に伴い、在庫処分35億円のほか、店舗整理を実施し事業整理損39億5300万円を計上する。



■戦略実行フェーズへ


このように、苦境が続く中国及びトラベルリテールの抜本的な対応策が迫られている中、2024年は各メーカーが「中長期戦略」を発表。2025年は実行フェーズの年としてスタートを切る。


しかしながら、資生堂の中長期戦略において、化粧品専門店は厳しい見方を持つ。その理由としてある専門店経営者は「資生堂は、共に培ってきた『客単価×生涯来店回数』=『生涯顧客育成』を忘れ、取引先の店舗で新規と出会い、売上30%になるまで自社ECへ流し込むというような、自社さえ良いミライシフトを目指しているように感じる。今の組織に変わってから、外資系の企業体質になってしまったと感じる部分が多い」というように、「共存共栄の精神はどこへいってしまったのか…」と不安を感じているお店が殆どだ。


また昨年実施した早期退職により、「PBP派遣のしわ寄せが顕著に表れている」といった声や、「ベネフィークやインウイの政策の弱さを考えると、専門店らしい活動を行ってきたお店ほど厳しい状況になるだろう。ブランドに販促費をかけられないのであれば、経費をかけずに行える動画やSNSの発信など、創意工夫で売上をつくる枠組みも考えてほしい」といった意見が聞かれた。



■〝専門店の覚悟〟求められる年


こうした状況を受け、専門店側としても「専門店自らが変わる覚悟が必要だ」という意識転換を図る経営者も増えてきており、これからは専門店においても、自らが考え行動し、しっかりと自店の利益を生み出していく〝自立型店舗〟になっていくことが必要不可欠になると感じている。


そしてその為には、各メーカーの考え方や施策に対して、どのメーカーに共鳴できるのかをまず見出すことが必要であり、その中で最も賛同できるメーカーとの取り組みを強化していく流れになるだろう。



■メーカーの「精選」より明確に


要するに、メーカーも専門店も、お互いに〝どこと手を組んでいくのか〟が、これまでよりもハッキリと明確化されていくことは間違いなく、「共に手を携えてやっていこう」と〝同盟〟を結べた数が多いメーカーが、プレステージ市場において成長を牽引していくのではないかとみている。


ただひとつ言いたいことは、これは多数のメーカーやブランドを取り扱っている店舗の話であり、オンリー店ないし、1~2の専門店専用ブランドを展開している店舗においてはメーカーを選ぶ手立てがない。この点に関しては、メーカーはしっかりと支援体制を整えて欲しいと思う。これまで1つのメーカーだけを信じ、共に歓びを分かち合う為に取り組んできた専門店を悲しませる行為だけはやめていただきたい。25年度も激動の時代となるが、こうした時こそ商売とは何が大切なのか、原点に立ち返ることが必要なのではないだろうか。(中濱真弥)

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