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日本商業新聞

【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -686- オオカミ少年

専門家の意見は頼りになるものだが、地震や台風に関してはその限りでないようだ。


日向灘で起きた地震を南海トラフの予兆として注意喚起を促し、観光地などに莫大な経済的損失を与え、1週間後に「それほど気にしなくていい」と撤回した地震学者。最強クラスの台風が来ると騒ぎ立て、交通機関に決断を迫り、多くの人の移動の足を奪った天気予報の専門家たち。そして必要以上に不安を煽り立てるマスコミの人たち。

あなたたちオオカミ少年のお陰で、5年前千葉を襲った台風15号の被害がトラウマになっている臆病者の団塊農耕派はご飯も喉を通らない8月を過ごしてしまった。



大げさに伝えたほうが効果があるし、親切だと言う考えにも一理はあるが、それが国民の為でなく、悪い方に予想が外れた時の自らの保身保険のように思えるほど昨今はこの種の過剰防衛が多い。怖がらせたわりに精度が悪く、たしかに大きな被害を受けた地域もあるが、大部分はやや雨と風の強い日に過ぎず、得したのは非常用備品が大量に売れたスーパーやコンビニだけで、多くの国民は無駄な防衛作業とストレスに数日を割いてしまった。避難が進み、人的被害が少なかったことを気象庁は広報活動の成果だと考えているようだが、単に予想が外れただけで、恐怖を煽ったことに対する反省のイロは無い。



最大の被害者は団塊農耕派のような臆病者だ。古い母屋の雨漏れ、屋根瓦の破損、近くの川の氾濫など心配は尽きず、そこに1か月分の雨が降り、トラックも横転するような強風が吹くと言われ、加えて過去の大型台風の悲惨な光景がテレビで繰り返し映し出されれば、オオカミに睨まれた赤ずきんちゃんのように凛々しくは成れず、ただ怯えるだけなのだ。心拍数と血圧は上昇し、その臆病ぶりは家族の笑いものになっていた。


加害者(?)の筆頭はマスコミだ。よくわからないのなら余計な情報を流さないでほしい。競馬の予想程度の精度なのに自信たっぷりにコメントしないでほしい。台風の場合はスーパーコンピューターという優れものがあり進路を正確に当てることができるのだから、その内容を事務的に知らせてくれるだけでいい。タレントもどきの気象予報士は要らない。今回の台風でもスマホで見るヤフーの予想がいちばん精度が高く、テレビは事実を言い当てられなかった。その結果、助けられた地域もあるが、各市町村が焦って開設した避難所のいくつかは閑散とし、動員された市の職員は暇を持て余し、余り過ぎた弁当の処置に困っていた。ちなみに真っ先に避難を勧められるのは高齢者だが、まだ晴れているうちに連れていかれ、空振りで帰されることが常態化するのは勘弁してほしいと思っている。


しかし団塊農耕派の意見は少数派で、国民の多くは「外れてもいいから情報が欲しい」と言うだろう。「予知とはそんなもの、それに翻弄されるのも仕方のないこと」と割り切る人も多いと思う。でも団塊農耕派はそうは思わない。予知能力が疑われる気象庁と無責任な報道を止めないマスコミにいつまでも「甘え」を許してはいけない。そろそろ腹を立ててもいいのでは。被災経験を持つ人や交通手段を失いそうな人をもてあそぶことがどれだけの罪悪なのか、胸に手をあてて考えてみてほしい。

(団塊農耕派)

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